久石譲さんと

Joe Hisaishi & Yui Morishita

小学生の頃、NHKスペシャルでやっていた《驚異の小宇宙 人体》というシリーズがとても気に入って、毎回ものすごく楽しみにしていた記憶がある。中学のときに生物の先生が授業時間に教材がわりに見せてくれたこともあったくらいで、当時としてはかなり最先端の研究まで紹介していたに違いない。生命の誕生、消化器、免疫系などのテーマに沿って、奇妙な病気の紹介などからその裏に隠れたメカニズムの説明へとつなぐ流れはぐいぐい引き込まれ、人の身体はこれほど不思議に満ちているのか、科学とはかくも面白いものなのか、と思わされた。内容もさることながら、まだ目新しかったCGを用いて、わかりやすくデフォルメしつつもスタイリッシュな映像でミクロの世界を表現する手法も目を引き、またナビゲーターをつとめたタモリの語り口もとても魅力的だった。Nスペ科学番組の中でも金字塔といって良い出来だったのではないだろうか(ちなみにいつも音楽をやらせてもらっている科学CG映像制作会社・サイアメントの瀬尾さんも、人体のようなシリーズ番組を担当してみたい、と常々おっしゃっている)。

なんといってもその番組を盛り上げていたのは、シンセサイザーの音色を主軸にしつつも、神秘的でエモーショナルな世界観をたたえた久石さんの音楽だった。私が久石譲さんの名前を意識したのはジブリ映画よりもまずはこの番組であったと言っても過言ではない。久石さんのCDは何枚も買ったけれど、中でもこの番組のサントラ盤は繰り返し聴いた大切な品。小学生時代の自分が衝撃を受けた思い出の方なのだ。

そんな久石さんの演奏会、舞台でご一緒できるようになろうとは。色々な思いがけないことが起きるのには慣れてしまった気もするが、それでもやはり特別に感慨深いことだった。ありがとうございました。

Music Future 2。久石さんの原点であるミニマル・ミュージックをテーマとして、ジャンル中では古典ともいえる作品と、久石さん自身の(映像音楽とはまったく違う方向性の)作品を含む新作がきける演奏会。今の久石さんがやるのでなければ、こうした現代音楽のコンサートでよみうり大手町ホールを2日間満席にするなんて考えられないことだっただろう。心から敬服する。

自分にできることに力を尽くす。やがてそれが意外なところで実を結ぶこともある。心を刺激される本番だった。

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  1. あ、補足ですがPTNAでの連載タイトルはもちろん《人体》へのオマージュであります。

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