「京」によるシミュレーション映像新作、音楽を担当しました

サイアメント新作、「核内混み合い環境でのヌクレオソーム、クロマチンの機能発現機構」がYoutubeで公開されました。タイトルはバリバリに「最先端研究!」という感じで難しそうと思われるかもしれませんが、まあまあともかくこの美しい映像を見てみて下さいませ。生命の神秘を垣間見た気分になれる作品に仕上がっています。

わたしの担当した音楽についてちょっと解説。今回はサイアメント代表の瀬尾さんから、印象派のようなピアノ曲なんかでも合う内容だと思う、と事前に聞かされており、サイエンスCGでクラシカルなピアノ曲が合うとはどんなものなのだろう、と少し不思議に思っていたのですが、コンテや仮映像、イメージ画像などを見せていただいて納得。分子の振動にわきたち震える細胞の中の景色が、DNAという複雑怪奇な仕組みが動く様子が、すごいリアリティを持って迫る。まだ完成映像ではないのに、シミュレーションというのはここまで来ていたのか、CGの映像化技術はここまで来ていたのか、と既に驚いてしまったくらいです。そして、なんといっても研究の成果の説明をしているだけなのに、そこに生命そのものの神秘と、それを解明して未来を切り拓こうという人の思いが凝縮された熱い内容が胸にくる。

ということで瀬尾さんの意向を汲みつつ、今回は完全にクラシックな曲をつけることに決めました。自分が話の内容に感動してしまったので、印象派よりちょっとロマン派に寄せて、最後はちょっと盛り上げる方向で。編成はピアノと弦4本の五重奏。ビデオコンテを見ながら展開に合うように譜面を書いて、レコーディングはテンポのクリックなどなしで、映像のタイミングに合わせながら録るという方法。映画なんかに近いかもしれませんが、しかし指揮者を立てられないので、秒まで見ながらぴったり合わせるようなことは難しい。私が画面に呼吸を合わせながら、メンバーについてきてもらうことになります。レコーディング当日の朝まで譜面がかかってしまったので弦のみなさんにはご迷惑をおかけしましたが、しかしカルテットでも活動してきている4人とあって息もバランスもぴったり。ラストなど3人がオクターブユニゾンで盛り上げよう、なんていう譜面だったので「それ絶対やばいやつですよ!」なんて言いながらも美しく決めていただいて脱帽です。(石田紗樹さん、下田詩織さん、松村早紀さん、山本直輝さん、ありがとうございました!)

生演奏なのでどうしても音楽の流れと映像への合わせが相剋するような部分も出てきてしまい、最終的なタイミングは瀬尾さんが今度は逆に音楽に合わせながら映像の方で調整してくださいました。いつも音楽をとても大切にしてくださる瀬尾さんが相手だからこそ許された贅沢な試みだったのです。結果的に、伸び縮みを自由にとったクラシックならではの演奏と映像が有機的に絡むという特別な効果が出せたのではないかと思っています。

そして映像の展開ありきで書いた曲ではありますが、構成はかなりクラシック的な意味でも緊密にできている……はず。このモチーフはこういう象徴、みたいなことも考えながら作っていたので、その辺も気づいてくださる方がいたりしたら嬉しい限りです。

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