唯一無二の指サポート用テープが製造終了していた

不織布テープ

熊本の地震、本当に先が見えなくて、ニュースを見ているだけでも心が痛む。ともかく一刻も早く余震が収束しますよう。何もできないに等しいですが、心ばかりの寄付だけさせていただきます。

さてそんな中、こんな些細なことで困っている自分が情けなくもあるのだが、嘆かせてもらいたい。指のテーピング用に愛用していた製品が消えてしまったというのだ。素晴らしいテープだったのに! 唯一無二だったのに! ……たぶん世界中でこんな愛用の仕方をしていたのは私ひとりなので、この嘆きは誰にも共感してはもらえないだろうが。

演奏動画をいくつかご覧になった方ならお気づきかもしれないが、私はしょっちゅう指にテープを巻いた状態でピアノを弾いている。私の両手の「2」の指(人差し指)は構造的に弱いのか、激しい曲――アルカンのような――を弾くとき、ことに寒い季節には、しょっちゅう爪と指の間の皮膚が破れて出血してしまう(昨年のSF大会のときはそれで鍵盤を血染めにしてご心配をおかけしたものだ)。そんなわけで、予めサポーターとしてテーピングをしてから演奏することが多いのだ。自分なりのテーピングの型もすっかり定着し、どんなに激しい曲だろうと完璧にガードする方法を編み出している。同様の悩みをお持ちのピアノ弾きの方がもしいらっしゃるならご相談に乗ります(※見たことない)。

さておわかりの通り、爪の間をサポートするのだから指先は完全にテープで覆われることになる。ということは、鍵盤に接するのは指の皮膚ではなくテープだ。ここに、大きな苦悩がある。ピアノを弾くというのは非常に繊細な行為であり、皮膚で直接に触れられないというのは極めて大きなハンデとなり得るのだ。

指サポート用のテープには多くが求められる。まず第一に重要なのが、薄さだ。テーピング時には何重にも重ねて指に貼りつけるので、分厚すぎればゴワゴワになり微妙なタッチの感覚を損なうばかりか、第一関節の動きに支障をきたすことにすらなりかねない。布テープの多くはこの点で不合格だ。

もうひとつが、テープ表面の材質感である。ピアノの鍵盤は皮膚で接したときにちょうどよい摩擦係数を持っている(かつては象牙が使われ、現在では象牙の質感に似た人工素材の開発が進められるなどしているわけだがそれはまた別の話)。そのため、凡百のテープは滑りが良すぎて実用に耐えない。ピアノ演奏時には指先を支点とする動きが案外多いものだが、支えようとするとき滑ってしまうとコントロールがまったく効かなくなってしまう。よくある、少し光沢を帯びたような紙テープなど最悪である。ツルツルでミスタッチ連発間違いなし。

ここまではかなり想像の範囲内だろうと思う。最後に重要になるのが何かおわかりだろうか。実はここをクリアする製品を見つけるのが最も難しかった。

――粘着面の質だ。一般的にサージカルテープは、テープ自体を激しく叩きつけ、擦るような使用を想定していない。そのため、粘着物質の状態や塗布の厚さによるのだろうか、演奏しているとテープの横から粘着物質が僅かずつだがはみ出してくるものばかりなのだ。粘着物質がはみ出すとどうなるか。まず、テーピングをした指が鍵盤に粘着するようになる。これは「滑りが良すぎる」状態とは真逆の状態を引き起こし、やはり演奏に重大な影響を及ぼす。更に、垢やら何やらの汚れを巻き込んで真っ黒になった粘着物質は鍵盤に付着し、テーピングをしていない指の感触までも奪っていく。……ついでに鍵盤の掃除も、大変である。最初の2つの条件をクリアしていれば、とりあえず演奏しはじめることは可能なのだが、演奏を続けているうちに粘着物質が出てくるのでは結局は使いものにならないのだ。

以上すべての条件を満たす製品、それが新タック化成「不織布テープ」だったのだ!(どどーん)

というわけでネットショップにあった在庫すべてを買い占めたのが上の写真になります……。激しい曲を練習しているときは毎日必ずテーピングするので、けっこう消費が激しい。これだけあってもやがて尽きる日が来るだろう。そのとき私はこれに代わる製品を見つけることができるのだろうか。

世の中にはおそらく、製造者が想定していないような使い方をして、謎の条件で愛用しているような例が私のほかにも色々とあるんだろうな、と想像する。そんな声は製造者には届いていないことが多いだろう。私もお礼状を送ったことはついぞなかった。届いていれば違っただろうか。新タック化成さん、今までありがとうございました。

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